ジャパネットたかた
株式会社ジャパネットたかたは長崎県佐世保市に本社を置く、通信販売会社。
創業者 髙田明さん。
実父の経営するカメラのたかたから1986年に独立し、設立した「株式会社たかた」が起源。
1994年にテレビショッピングをスタート。
2015年1月 髙田明さんが代表取締役社長を退任し、後任に長男・髙田旭人さんが就任
また、2024年10月に開業した、大型複合施設 長崎スタジアムシティを造った地元企業が、ジャパネットたかた。
(ジャパネットホールディングスが主導する認定民間都市再生事業計画「長崎スタジアムシティプロジェクト」により整備)
創業者の髙田明さんは、1代で売り上げ1759億円(ジャパネットホールディングスの2010年の売上)の企業に成長させた名物社長。
2015年に退任し、新社長に変わると売り上げはさらに伸び、昨年は2621億円と過去最高の売上。
そんな過去最高の業績を上げたカリスマ社長が、創業者の長男髙田旭人さん。
ジャパネットホールディングスの代表取締役社長兼CEOを務めています。
東京大学を卒業後、大手証券会社を経てジャパネットに入社。
前社長の父と衝突も
新しい企画を発案する長男 VS 反対する父
林修「ご著書にも書かれてましたけど、結構お父さんと色々激しく争いも…」
髙田旭人社長
「やっぱりこうこれまで積み上げてきたものをベースにしている父と。
まあ、これから30年、40年をどうしようって考えてる2代目っていうのは見方が違うので。
今でもやるチャレンジデーっていう1日で1商品を売り切るっていう企画をまあ、ある社員と一緒に発案した時に…」
当時専務だった旭人が企画したのは、1つの商品を1日だけ衝撃価格で販売するチャレンジデー。
商品を1つに絞ることで、大量に安く仕入れられるが、売れなければ、在庫を多く抱えてしまうリスクが。
社員を会議室に呼出し、賛否を問う
髙田旭人
「結構もう「それはダメだと。経験上、そんなの上手くいかない」っていう父と。
「やってないのに分かんないじゃない」っていう僕と。
もうこれは我慢ならんと思ってみんなに聞こうと思って。
30~40人の会議室で、どっちかに手を挙げてっていうので。
踏み絵をしましたね。
そしたら、2~3名父の方に手を挙げて。
残りは全部やりたいっていうので手を挙げたので。
それが結構象徴的でしたね。びっくりしましたけど」
林修「なるほど。その時お父様に賛成された2,3名の方って、僕ものすごい気になるんですけど」(笑)
髙田旭人社長「いや、でも、今も全然活躍してますよ。そんなのおぼえてないです、もうそいうのは」
林修「ホントに報復人事とかそういうのは一切しないということですね」
髙田旭人社長「一切しない。根に持ってない(笑)」
長男の企画が通り、チャレンジでーを実施…大成功
林修「旭人さんの主張が通って、チャレンジデーを実施されたと」
髙田旭人社長
「そうですね。その会議終わって、父はその瞬間「もう俺は知らん」って言って、その会議室を出て行くんですけど。
ただ、紹介するのは父なので。
でも、それは6時間位のリハーサルをして、全力で紹介をしてくれたので」
林修「すごい時間準備をなさるんですね?」
髙田旭人社長
「やっぱりその時は、結構びっくりしました。
あれだけ反対したのに、普段よりも長かったので。
父は「絶対成功させよう」っていう気合いでやってたんだと思いますね」
そして、父・明が全力でエアコンを売り込んだ結果…
用意した1万台以上を全て売り切り。
たった1日で17億円もの売り上げを達成した。
父の強みと自分の強みは違う
林修
「ご自身のやり方とお父様のやり方。
なんか大きく変えたっていうことはおありなんですか?」
髙田旭人社長「やりかたは、もう全く違いますね」
父と自分では強みが違う。
そう考えた旭人社長は、これまでのやり方を大きく変えた。
ジャパネットの柱3つ
①売れる商品を見つける事
②その商品の魅力を使えること
③商品を改善し、磨く事
父は「伝える」 自分は「磨く」
髙田旭人社長
「父はでも「伝える」。
こうやっぱりテレビに出たり、チラシの制作をしたりをしたりで、伝える部分にすごく重きがある人で。
でも父辞めたときに、こう伝えるは絶対戦力ダウンするんだけども、磨くは裏方なんで。
今より良くなるかなっていう感覚ではあったんですよね」
アフターサービス、修理、コールセンターを自社で
林修「磨くの進化って具体的にどんなことをなさったんですか?」
髙田旭人社長
「社長になってから、アフターサービスの会社を作って。
300人ぐらい今いるんですけど。
アフターサービスの電話を取る、修理をするっていうのを全部自社でやっていて」
林修「コールセンターも自社ですべて賄ってらっしゃると」
髙田旭人社長「そうですね」
商品の魅力を伝える力がずば抜けていた先代の社長に対して、自分の強みは商品を磨くことにある。
そう考えた旭人社長は、通販会社の多くが外注するコールセンターを自社で持ち、オペレーターを社員が務めることにしたのだ。
アウトソーシングすると矛盾する「だぶついた時間があれば勉強すればいい」
林修
「外に出しちゃう。アウトソーシングしちゃう会社もありますよね?まあでもそこは、自分のところで?」
髙田旭人社長
「アウトソーシングすると、やっぱ矛盾しちゃうからですね。
こうコールセンターの例えば応答率をあげようと思うと、アウトソーシングされた会社はその効率よく受けたいので人を絞った(減らした)方が絶対良くて。
で、だぶつくと(人が余ると)そっちの収支が下がるので。
で、我々は人数を増やしてもらわないとサービスが上がらない(低下する)ので。
そういう矛盾がずーっと起こっていて。最初外部に出してた時は。
だったら、もう自分たちでやって。
だぶつくなら、だぶついた時間でみんなが(商品などの)勉強をすればいいだけで。
ちゃんと、電話をちゃんととれる世界を作ろうっていうところから、今はもう2000人以上コールセンター自前でやってますね。
そんなコールセンターを覗いてみると…
他の通販会社ではあまり見られない光景が…
問い合わせがあると、オペレーターがお客さんと同じ商品を手に取り、商品を実際に自分で使用しながら、お客様に説明。
たらいまわしにせず、丁寧な対応を行っていた。
さらに、修理を自社で行う大改革も決断。
それまで修理はメーカーに依頼し、1~2週間ほどかかっていたが、自社で行うことにより、故障の電話がかかってきてから、最短3日で直したものをお客さんに戻せるようになった。
衝動買いした人を後悔させない「ジャパネットなら安心」を目指す
林修「でもそこまでなさるって、やっぱりコストとか色んなこと考えても、大変なんではないですか?」
髙田旭人社長
「でも、結局、1回買った方が、「ジャパネットなら」って安心してもらえることが、結果的にはトータルプラスだと思うので。
あの、ジャパネットって衝動買いの会社だって言っていて。
たぶん朝起きて、今日掃除機買おうって思ってる人はだいたいこう家電量販店さんとか行くんですけど。
ジャパネットで買う方って、買おうと思ってないんですよね。
でも、テレビで見たら、「おっ、いいな。そろそろ買おうか」つって、朝買うつもりがなくて、お昼ぐらいに買われてるんで。
絶対後悔させちゃダメで」
1年の浪人時代が自分の人生観を変えた
やり方で全然成果が変わることを実感
過去最高の売上をたたきだした旭人社長。
その戦略の根底には、浪人時代に学んだある考え方があった。
林修「大学は同じ(東京大学出身)ということで」
髙田旭人社長
「僕は浪人してるんで。
だから浪人中がやっぱりそういう勉強の仕方をガラッと変えたんでですね。
で、それが大きかったですね。
やり方で全然成果が変わるっていうのが」
林修
「でもここ(旭人社長の著書)に書かれてますよね。
『正しい努力をすれば結果はついてくる。正しい努力を自分なりに工夫して結果を残したことで、口癖のように自信がないと言っていたのも減りました』とこう」
努力の仕方がすごく大事
髙田旭人社長
「僕はもう人生たぶん浪人してなかったら、全然変わってたと思うぐらい1年間の浪人は自分の人生観変えたので。
結構今でも、「能力×努力の仕方×努力の量」だっていう、社内でも言うんですけど。
能力はもう生まれ持ったものなので、どうしようもなくて。
で、努力の量も時間の限界があるんで。
やっぱ努力の仕方っていうのはすごく大事で。
結構、努力の仕方を考えずにがむしゃらにやるっていうのが美徳とされる感じを変えないといけなくて。
そういうのはずっと、受験の時に自分が感じて、まあみんなにも教えてますね」
優秀な生徒はやらないことを決める能力が高い
林修「受験に関して僕がさすがだなとあの感心したのは、『もう理系だったので古文は捨てる』っていう選択をなさったと」
髙田旭人社長
「いや、ほんと捨てたんですよ、もう。
あと古文はあれなんですよ。
気合い入れて見たら、なんか分かる気がするっていうので。
あの全く勉強せずに、一か八かで読み解くっていう風に」
林修
「もうそこに時間を割かずに、その時間を他の科目にあてた方がトータルでって。
いや、これ僕最近授業でよく言うんですけど。
まあ、この残り時間が少ない時期に、みんな真面目に色んなことやろうとする。
それはみんなやるけど、優秀だなって思う生徒は、「これをやらない」。
やらないことを決める能力が高い。
拝読したら、「古文はやらない」」
強みを理解し、徹底的に鍛える。
この考え方の元行ったもう1つの大改革が…取扱商品の大胆な削減。
約8500の商品を777まで絞り込み。なんと、90%以上の商品から撤退。
選び抜いた商品に全力を注ぐことにしたのだ。
地元・長崎の地域創生「長崎スタジアムシティ」を作る
そんな捨てる戦略をとる一方で、新たに大きな事業を開始。
それが地元・長崎の地域創生。
実は長崎県。人口が流出している割合を示す社会減少率が5年連続で全国1位。
この社会問題を解決しようとジャパネットがとんでもない施設をつくったのだ。
それが、長崎駅から徒歩10分の所にある「長崎スタジアムシティ」。
試合の日以外も楽しめる工夫
林修「長崎にちょっと驚くような施設をつくられましたよね」
髙田旭人社長
「そうですよね、まさに。
もうほんとに、オープンしたばっかりなんですけど。
長崎市の駅(長崎駅)から5分~10分位の所にこれを作りましたね。
中心にスタジアムがあって、横にアリーナがあって。
あと、オフィス、商業(施設)…まあ、ホテルがあるという感じですね」
しかしこの施設、メインはサッカーとバスケのスタジアム。
どうやって人を呼び込もうと考えているのか?
林修「お客さんを呼び込む作戦は、いろいろお考えだと思うんですけれども」
髙田旭人社長
「そうですね。やっぱ試合が年間20試合しかないので、サッカーだと。
そのピッチを使ってどうするかっていうので。
だからもうスタジアムもいつでも公園みたいに入れるようになってるんで。
あのー試合がない日は、スタジアムの席に普通に座ってご飯食べたりもできるようになってるんですよね、はい」
ジップラインっていうスタジアムの上を滑り降りるジップラインを作ったので。
それも試合がない日は上を滑り降りることをやったりとか。
もうほんとに色んなことをやってますね、はい。」
さらに客室からスタジアムを一望できるホテルには、旭人社長が考えた驚きの仕掛けが。
林修「ホテルに置かれているものが、基本的にジャパネットで売ってるものだと」
髙田旭人社長
「そうです、そうです。ベッドは今エアウイーヴさんのマットを使っているんですけど。あと電気とかテレビとか。
なんかこれがいいなと思ったら、もう横にジャパネットのジャパレクラボっていうお店があるので。
そこ行ったら、すぐ家に送りますとか」
林修「だからホテルを持つメリットもあるんだと」
髙田旭人社長
「そうですね。ただまあ、結構、難しいですね。
セールスチームはホテルをもう結構売り売りに。
それこそポップアップ(「期間限定特価」など)いっぱいつけて、値段のスタディ(29,800円!)したがるんですけど。
それやめようと。
ホテルはもっと大人しく。
あの気持ち良く泊まってもらって、「あ、帰るんだ」くらいの温度感にしようっていうバランスを取りながらやってますね」
林修
「やっぱりね。ドライヤー使ったら、39,800円って書いてある。ちょっと…」
髙田旭人社長「そう。やだなぁと思って」
人口を増やし、利益を上げ、最終的に日本が良くなることを目指す
林修「でもどうして大規模な施設をつくろうと思われたんですか?」
髙田旭人社長
「地域創生をやろうとしたときに、スポーツと地域創生ってすごく相性が良くて。
まあ、グループ内にサッカーチームがあったので。
スタジアムをつくろうと決めて。
じゃあ、アリーナも作るんだったら、バスケチームもいるなっていうので、バスケチームは実はゼロから4年前に立ち上げたんですけれども。
そういう感じで、こうサッカーとバスケットを軸にして、長崎がもう楽しい場所になって、長崎の人が生き生きして、人口が増えて。
で、我々もちゃんと持続可能に収益を上げるっていうのをできたときに、なんか日本中でこう民間企業がそういう投資をする世界が広がるんじゃないかっていう仮説があって。
成功させたら日本が良くなるなっていうのが元々の想いではありますね」