今回のテーマ『芸人に嫌われる芸人の本音』
ウエストランド井口「基本芸人同士ってなんだかんだ好きじゃないっすか」
とろさーもん久保田
「そう。ナダルとか見て分かる。クロちゃんとかさ。
一般には嫌われてるけど、別に芸人からはそこまで嫌われてなかったりもするから。これ難しいよね」
ウエストランド井口「これだから一番嫌ですよね、これが(笑)」
とろさーもん久保田「嫌やなぁ…」
エハラマサヒロさん事前インタビュー
今回のゲストはエハラマサヒロ
ウザイキャラやモノマネなど多彩な才能で、2009年、2010年と2年連続「R-1グランプリ」準優勝。
昨年(2024年)吉本興業を退所。
現在はミュージカルなど多方面で活躍。
しかし、芸人から嫌われる芸人と言われることも。
憧れてる芸人の世界で嫌われた…1年目から
エハラマサヒロ
「(嫌われてると)言われたのは、もう1年目からです。
自分では気づいてなかったんですけども、なんか周りに好かれないなぁっていうのは何となくあった感じでしたね。
憧れてる芸人の世界で嫌われてるって感じたときは、いやキツかったです、メッチャ最初。
今ほどやっぱりちょっと僕も学んでないし。
若手の時なんてほんとに尖ってもいるし、調子乗ってもいるし。あと礼儀も分かってないし。もう全てがバカなんで。
だから先輩からしたら可愛くない後輩だったと思うし。
でも、その中でも(とろサーモンの)久保田さんは付き合ってくださってた先輩の1人ですね。
失敗したことが1回あって。
笑い飯さんて、やっぱり若手劇場でも、やっぱり天才やし、みんながすごいって思ってた。
で、笑い飯さんにやっぱり好かれたいって思ってるんですけど、久保田さんは結構笑い飯さんに好かれてたんですよね。
で、久保田さんにちょっと相談した時に、(久保田さんが)「笑い飯さんは逆のこと好きやから、ちゃんと正攻法でいくより、逆になんかこう嚙みついていくみたいな。そういうヤツの方が面白がってくれる」。
で、僕はそれを一生懸命頑張ってやろうとしたんですけど。
(噛みつく感じと自分の)芸風が違いすぎて。
ちょっと嫌われたんですよ(笑)
言う人によって、やっぱりちょっと…やり方は変えなあかんねんなってことを学びましたね」
そんなエハラさんが執筆した文章のタイトルは?
エハラマサヒロ
「「嫌われ芸人の生き方」ですかね。
なんとなくこう昔のことを思いだしたときに、もう悪いことは忘れようと思ってるんですけども、やっぱりポコポコエピソードが出てきたんですよ。
ってなった時に、「あ、今こんだけ風化してたと思ってもよみがえるってことは、相当辛かったんやろな~」とかいうことは思いましたね。うん」
スタッフ「どういう人に聞いてほしいとかありますか?」
エハラマサヒロ
「そうですね。だから、人間関係で悩んでる人。
で、みんなの根底にある「嫌われたくない」が色んなことを制限してると思うんですけど。
1回それ(その気持ち)を取り除いてみるのも、なんか自分の新しい道になるんじゃないかなっていう気はするってことですね」
MC2人から見たエハラマサヒロさん
メチャクチャ優秀で嫉妬された…器用すぎて腹が立つ
ウエストランド井口「久保田さんはなんでこう仲良くしてたんですか?鼻につくこともなくというか」
とろサーモン久保田
「まず宮崎人やから、宮崎の言葉で「イタい」っていう言葉がないから。イタいってなんなの?っていうのは聞いたりするぐらい。
だから鼻につくんだよねみたいな言うけど、俺は何にも思わなかったな」
ウエストランド井口
「でも、エハラさんだけだもんな、やっぱ。こんな感じでイジられてるというか。
で、実際やっぱ仕事がずっとあるわけですからね」
とろサーモン久保田
「そうそうそうそう。嫉妬やろね、みんなの。
意外とその芸人のお客さん…見に来る人は知らないと思うんですけど、メチャクチャ優秀で。
笑い飯、麒麟、千鳥とかまあ南海キャンディーズとかいった世代…黄金世代の時に、メチャクチャ早くオーディション、漫才で通ってた人ですよ」
(※エハラさんは当時コンビを組んでおり、芸名はカウンターパンチだった)
ウエストランド井口「ああ~。でも早めにもう出てましたしね」
とろサーモン久保田
「もうメッチャ。ムッチャ面白かった人なのよ。
ただやっぱ器用すぎるから鼻につくじゃないけど」
ウエストランド井口「そこですよね」
とろサーモン久保田
「芸人にさ、「はい、1分間ダンスしてください、ボケずに」。恥ずいやん。
ダンス1分間して、ありがとうございやしたって言って、すぐ帰りたいやん。
こいつ(エハラは)1分間マンキンでやって、決めポーズして、前髪フッってするヤツやねん」(笑)
ウエストランド井口「まあでもなんか、言いたいことは分かります(笑)」
とろサーモン久保田「なあ?分かるやろ(笑)そこがちょっと嫌われるんちゃう?」
ウエストランド井口「まあ、で、できちゃうからっていうのもありますよね」
とろサーモン久保田「そうそうそうそう」
「文は人なり」(博物学者ビュフォン)。文章こそ本音がむき出しになる
『嫌われ芸人の生き方』 by エハラマサヒロ
ただ毎日楽しい人達と一緒にいたい…しかし、嫌われ馴染めなくなった
18歳でこの世界に入って、今年で芸歴24年。
「芸人みんなから嫌われる芸人」。
そのキャラクターを受け入れられるようになったのは、ここ数年ほどの話で、それまでの自分は事あるごとに傷つき、苦しんでいたように思う。
9歳の頃、大阪のローカル番組で若手芸人さんを初めて見た時、「この中に入ったら毎日どれだけ楽しいんだろう」そう思った。
進学校に通って、毎日勉強で縛られていた子供がお笑いを目指したきっかけは、ただ毎日楽しい人達と一緒に居たいだった。
NSCを卒業して芸歴1年目から劇場に出入りできるようになった僕は、周りに先輩芸人、面白い人達で溢れかえってる楽屋、もう夢のような空間だった。
いろんな人に話しかけに行っては、ずっとはしゃいでた。
そんな時に、少しずつ周りの子でが漏れ聞こえてくる。
「あいつイタいよな」「大学生やん」「先輩ナメてるやろ」。
当時いたbaseよしもとという若手劇場はお客さんの大半が女子高生で、僕は女子高生に人気が出そうなポップ漫才をやっていた。
芸人には受け入れられない芸風に加え、変に人気もあり、楽屋で偉そうにはしゃいでいる後輩。
芸人が好かない要素の塊だった。
元々調子乗りで自慢したがりの性格。
今考えると馬鹿なだけなのだが、変に器用なだけにそれをバカだと言ってくれる人もおらず、可愛げもいじれるところも無い。
ただ陰口を叩かれて、人が離れていく。辛かった。
子どもの頃から憧れ続けた芸人の世界にやっと入れたのに、入ったらそこに馴染めない人間になってしまっていた。
でも本人はなぜ嫌われてるのか分からない。
楽しい人達と居たいだけなのに、いろんなところで悪い評判が広がり、居心地が悪くなっていく。
仕事が増えれば「アイツ、あれに出るらしいで。あれ何がおもろいねん」。
嫉妬で人が人のことを嫌いになることもその時知った。
人が怖くなってしまい、先輩とご飯に行くと知らないうちにまた何かやらかして他で言われるかもしれない恐怖で、先輩に近づけなくなっていった。
後輩には「俺と仲良くしてたら嫌われるかもしれんから、周りに言わん方がいいで」と言ってた。(久保田「悲しすぎるて」 井口「悲しいなぁ」)
嫌われてもいいから売れたい
ピン芸人になり「鼻につく」それが僕の強みだと分かってきた頃から、鼻につくキャラクターのコントをネタにするようになった。
鬱陶しいシンガーソングライターのネタがR-1で評価された事でテレビに出られるようになったが、テレビで求められるのはもちろん鬱陶しいキャラクター。
売れるために全て上から目線、自慢、偉そうな返しを必死で考えてやった。
すると今度は世間から嫌われた。
嫌われてもいいから売れたかった。
でもその頃には僕の事を理解してくれる芸人もいて、その人に「今度この番組に出るんですけども、アドバイスもらえますか」と相談することがあった。
そこから数日経って、その人が飲みの場で「エハラにあの番組出るって自慢されたんですよ」と言われてるのを耳にする。(久保田「え~」)
本当にショックだった。
その場の笑いのネタとして言ってたのかもしれないが、味方がいない僕にとって、信用してた人にそう言われてた事は本当にキツくて、当時の僕は受け入れられなかった。
余裕がなかったんだろうな。
歌って踊るネタをやっていると、お客さんは喜んでも芸人は認めない。
芸人が喜ぶのは大喜利の強い芸人。
そして、好きなことをやってお客さんにスベりまくってる芸人だ。
芸人に好かれたくて、男しかウケないようなネタをやって、お客さんにスベってみた事もあった。
その場では「お前やっぱ芸人やな」と認められた気にはなるが、お客さんにウケないと意味がないと思い、やめてしまった。
嫌いな芸人は誰ですか?
芸人にとって難しい質問がある。
「嫌いな芸人誰ですか?」
この時に名前を出してウケるのは、本人と関係性があってエピソードがしゃべれる人。
そして世間も共感できる嫌いな人。
僕はそこに入ってたため、よく使われた。
いろんな芸人から電話がかかってきて、「番組でエハラの名前出してもーた。悪い感じになってるかもやけどボケやから。ごめんな」。
そう言ってくれる人たちは優しい方で、エハラを悪く言えばウケると勘違いした芸人が、まるまる嘘の悪口エピソードをテレビでしゃべってた事も多々あった。
でもそれを必死で否定しても、「芸人がなに本気になってんねん、おもろない」と言われてしまうため、黙ってた。
イメージはどんどん悪くなっていった。
自分が楽しかったらいい
でも目の前の事を一生懸命やっていたら、お仕事は無くならず、それが少しずつ自信になっていった頃、周りの目を気にして自分の見え方を意識して生きてきた人生から、「どう思われても自分が楽しかったらいいや」。
その意識に変わっていった。
「嫌われてる」という自分を受け入れられるようになった。
そして視野を広げたら、「本当に嫌いな人の事は、人前では嫌いとは言えない」事に気づいた。
みんな「嫌い」という形で僕を活かそうとしてくれていたんだ。
余裕が無かった僕が見えてなかっただけだった。
どんな人間も嫌われたくない。
だから一生懸命嫌われないようにいろんな事を我慢する。
人の顔色ばかりうかがっていると、人に動かされる人生になり、結果、自分が求めてない周りには好かれてるけど、自分は生きづらいという状況が生まれてしまう。
でも、好きに生きてみても、それを好いてくれる人はどこかに現れるんだ。
今の僕は嫌われているかもしれないが、人生を一番楽しめていると思う。
エハラさんの文章を聞いたMC2人の感想
ちょっとウザイところがエハラさんらしさ
ウエストランド井口「どうですか?久保田さん、聞いてみて」
とろサーモン久保田
「いや、いいんじゃない。だってさ、芸人でここまで嫌われてるって言ってるけど、「今幸せです」って言えるヤツ何人おる?
家帰ればキレイな嫁さんいて子供いてメシもあって。好きなこともやられてる。
それでいいよな、と思うけど。
意外と共通点俺らとあるやん。
コイツもなんか嫌われてるの嫌やけど、その嫌われてることをネタにして世間に嫌われたけど、ネタでは受け入れられる。
これ魂の引き換えはしてるやん」
ウエストランド井口
「最後の方に言ってたように、こう本当に嫌いだったら名前も出さないわけじゃないですか。
だからそこがホントある意味唯一無二だし。
なんか…まあ、こんなん言うとあれなんですけど、この文章もウザいじゃないですか。
あのそのちょっと…(笑)
いや、何て言うんですか。あの…エハラさんらしさというか。
いや、いい意味でというかその…。
なんか、そう言える人じゃないですか。
その、なんか…なんかウザいなっていう、その(笑)」
とろサーモン久保田
「なんか遠回し 遠回しというか。(笑)分かるよ」
ウエストランド井口
「その、それがもうエハラさんですからね。
やっぱ。別にあんまり必要なさそうだけど、「進学校に通っていたが…」みたいなその(笑)
なんかのもありましたよ、その」
とろサーモン久保田「気になってるやん(笑)」
ウエストランド井口「いやいや、別にいいんですけどね。それからお笑いへというギャップを作りたかったんだと思いますけど、なんか」
とろサーモン久保田「それがエハラなのよ」
ウエストランド井口「そう。それがだからやっぱりエハラさんの良さというか」
とろサーモン久保田「良さやんな」
ウエストランド井口
「芸人の世界に入って、そのギャップを感じたりは?
まあエハラさんはね、楽しい空間だと思って入ってきてたら、色々言われちゃったっていうのはありましたけど」
とろサーモン久保田
「そう、だから、当時は俺はだから本当はおしゃれ好きやから、サングラスとかネックレスつけて劇場行きたかったけど。
いじられて「何やねんそれ!」とか「イタいな」とか言われるのが嫌やったから、(自分を)殺してた。
自分が着る衣類さえも殺してた」
悪いのは当時のbaseよしもとだ!…最悪の集団
ウエストランド井口「当時のだからbaseよしもとでしょ?とにかく」
とろサーモン久保田
「当時のbase(よしもと)ですね。当時のbase(よしもと)が全部悪い!」
※当時のbaseよしもと芸人…麒麟、笑い飯、千鳥、とろサーモンなど
ウエストランド井口
「ほんとに!今でこそ、そこにいた人はみんな成功してるからいいけど。最悪の集団というか、その」
とろサーモン久保田「いや、ホントに。クローズの学校みたいな。ホントにヤバいヤツばっかりで」
ウエストランド井口「逆になんか良かったこととかはありますか?」
とろサーモン久保田
「良かったことか~…。でもその、そういう痛々しい言葉を選ばずに、ストレートで感情のまま怒ってくるから先輩たちも。
だから本気やなってのがあったから。
今でもお付き合いしてるし、やっぱり。
それはあるかな?いいことで言うと。
今の人は、建前でね、傷つかないようにつって言ってくれるけど、それは俺は入らないし」
ウエストランド井口
「まあでも、嫌なこというヤツいたけど、いなくなりましたね、なんか。その成功してないっていうか。
最初の方の地下ライブみたいなところにはなんか色々言ってくる奴とか。
ああいう地下の劇場のソファーに座ってる人とか全員いなくなるっていう、その。
楽屋で偉そうに芸歴だけ重ねてね、やってる人はいなくなりましたから」
とろサーモン久保田「みんなだからメシ食えるようになったから、若手も。昔ほどじゃないやん。貧しさが争いを生むんだよ」(笑)
ウエストランド井口「いや、ホントにそうかもしれないです。(笑)
配信とか始まって良かったですよ」
とろサーモン久保田「良かった、ホント」
芸人と集う楽しさを超える、家族といる幸せ
とろサーモン久保田
「逆に俺はエハラに聞いてみたいねん。
今、吉本退社したけど。その芸人と会ったりとか話したりすることに今、行きたいな、そっち話したいなみたいなとこないのかなとかさ」
ウエストランド井口
「それ気になりますよね。
だからそこ思うんだよな。
もう今の時代ってそりゃYouTubeでも食べていけるでしょうし、TikTokとか色々あるでしょうけど。
やっぱ芸人に会えなくなるのが嫌だから、そっちには行けないっていうのもあるじゃないですか」
とろサーモン久保田
「でもこれさあ、俺も井口も子どもおらへんやん。
エハラ子どもいますよね、何人もね(エハラ家は子ども5人)。
ここに共通してるやつがもう1人、カジサック(カジサック家こども5人)。
子ども多いやん。
やっぱ子供が多いと芸人より超えてしまう幸せがあるかもね。」
ウエストランド井口
「まあ、それはそうだな~。
だから、芸人といるのが楽しいってなんか盛り上がってましたけど、なんか悲しいですねそれなんか(笑)」
とろサーモン久保田「アハハハハ(笑)!お前芯つくなや、お前(笑)!誰が核心つけって言うてんねん、お前」
ウエストランド井口「なんかここで「ね~。楽しいですよね」って言ってたけど、1回俯瞰で見たらすごい悲しい」
とろサーモン久保田「やめてくれよ、お前。みんなチャンネル変えるぞ、今から!」
ウエストランド井口「久保田さんがそれ気付くからでしょ!やめてくださいよ!」
とろサーモン久保田「暗い道歩いてちっちゃいライトにたかっていくような俺たちは虫やん。
でも子供がたくさんいると、もうこうごうとしたライトの中にずっといれるってわけなのよね」
ウエストランド井口
「いや、ホントにそれはそうですよね。
そりゃ、芸人と楽屋でいるより、家に帰って家族といる方が楽しいに決まってるんですよ(笑)」
とろサーモン久保田「そりゃそうだよな」
