1.Mrs.GREEN APPLE
メンバー
大森元貴(おおもり もとき)…作詞作曲、ボーカル、ギター
藤澤涼架(ふじさわ りょうか)…キーボード
若井滉斗(わかい ひろと)…ギター
昨年(2024年)の日本レコード大賞を受賞し、史上初となるバンド初の2年連続レコード大賞受賞という偉業をなしとげた。
2023年 日本レコード大賞曲「ケセラセラ」
2024年 日本レコード大賞曲「ライラック」
大森元貴さんの独特な曲作り
譜面は読めない、書けない
2024年日本の様々な音楽ランキングを独占し、今最も聴かれて歌われているアーティスト
そんなミセスの楽曲は大森元貴が作詞作曲を手掛けているのだが、実は…
大森「譜面僕読めないですね。読めないし、書けないですね」
林修「でも、曲は作れる?」
大森「曲はなんとか作ってますね」
藤澤「音源だけで、僕らに送られてくる状態ですね」
若井
「その音源の中に入っているギターだったり、キーボード、ピアノだったりを耳で聴いて、コピーして演奏するっていう」
大森「耳で聴いて頑張ってくれてるんですよ」
難しすぎた楽曲「ライラック」のメロディーライン
譜面の書けない大森が天性の感覚で生みだすメロディーライン。
その難度の高い曲にメンバーが苦しむことも多いらしく…。
昨年のレコード大賞受賞曲「ライラック」ができた時には…
林修「これ初めてお聞きになった時、若井さんどう思われました?」
若井
「これあの…ギターがまず難しすぎるなっていう。
聴いた瞬間に、「これギターかな?」っていう。
「え?これギターなの?」「これギターの音だよね?」「信じたくないけどギターの音か…」つってね」
ミセス楽曲の中で難易度最高クラスのギターイントロ部分。
若井
「先に(大森に)謝られました。「若井ごめん」って言って曲が送られてきて。
「あ、そういうことか…分かりました」。
いや、本当に泣きました」
大森「家で練習してるのが、すごい嫌になって、家に帰りたくなくなったって言ってたよね?」
若井「その練習してる部屋が嫌いになって(笑)」
難しいメロディーや当日の変更に泣かされる2人…
(ここから前回放送できなかった未公開部分)
林修「普段どんな風に曲作りをなさってるんですか?大森さんは」
大森
「普段は1~2時間で楽曲を仕上げるようにしてるって言ってるんですけども。
こうやっぱ集中力がワーッと湧いている状態…たぎってる状態で楽曲を書くと、やっぱ冷静じゃないので。
なんか、「あ、こっちのメロディーに行くと気持ちいいな」「こういうメロディーだとなんかすごく素敵だなぁ」って自分の琴線に触れるようになるべく作っていくと、終わった時に、「こんな難しいの歌うの?」みたいな。
こうなんか「高くない?この歌」みたいな」
若井「「誰がこの曲作ったの?」ってよく言ってますよ」
大森「何て難しい曲なんだと思って」
林修「同じようなことが藤澤さんもおありだったんですか?」
藤澤「そうですね。僕もレコーディングで泣きますね」(笑)
林修「両サイド泣かせてるんですか?」
大森「藤澤の方が泣く率は高いよね?」
若井「ああ、そうだね」
藤澤「結構ね。レコーディング当日に「フレーズもっと変えてみようよ」とか」
大森
「(笑)いや、でもすごいですよ、本当に。
そのレコーディングで、僕がやっぱその楽譜が書けないので、口で言うんですよ。
「なんか、テロテロテロテロみたいな感じで弾いて」みたいなこと言ったら、(藤澤が)「こういう感じ?」みたいなことでその場でくれるので。
その場での発想力のこう瞬発力みたいな。発想の瞬発力も大事にしたいので。
その場で思いついたことは、結構僕は勝手に言うんですけど。
そうだね。大変だよね、きっとね。すいません」(笑う藤澤さん)
最新曲は難度も最新
林修「最新曲は絶えず難度も最新で?」
(うなずく3人)
若井「ほんともう、そうなんですよ。ホントにそうです」
大森
「最新曲は、みんな最新状態での難易度なので難しいけど。
昔の曲とかやっぱ弾くと、やっぱ藤澤とか特にキラキラしてますよ。(笑)
振り返ってみるとやっぱり、あの昔の曲を演奏する機会とかがやっぱライブであると、すごく分かるよね。(若井「そうだね」)
ああ、やっぱ血肉になってるなっていうのをすごく感じますし」
若井「さらに良くなってる、昔の曲がっていう風に感じますね」
大森「でも、昔の曲弾いてる時が、みんな生き生きしてるんですよね(笑)」
林修「過去の曲を弾くと、こう克服した自分たちの成長を実感できる。いいバンドですね~」
(3人(笑))
大森「ありがとうございます」
飲まず食わずで作った 楽曲「Soranji」
現時点での自分たちの最高難度レベルに挑戦し続ける。
それが、Mrs.GREEN APPLEの信念。
その作品は…
映画「ONE PIECE FILM RED」の劇中歌「私は最強」のような楽しくアップテンポな曲。
合唱コンクールでも歌われる名曲だあり、世界で活躍する日本人アスリートの背中を押してきた楽曲「僕のこと」。
2022年二宮和也主演の映画「ラーゲリより愛を込めて」の主題歌「Soranji」で聴かせた繊細なバラード。
そのように、ミセスの楽曲は曲調の幅が広い
中でも、戦後、強制収容所に不当に抑留された男の壮絶な人生を描いた戦争映画「ラーゲリより愛を込めて」の主題歌は、その作り方も壮絶でした。
大森
「戦争だったり、抑留をこう題材とした映画だったので。
それをお話しいただいた時に、まあ実話だし、役者の方々も相当な思いで臨んだ映画だという風に伺っていたので。
僕もすごい集中力をちゃんと掻き立てなきゃいけないなと思って。
飲まず食わずで。
なにかこう物が体に入ると集中力が切れる気がして。
なんか、狩りの時の集中力じゃないですけど。
なんかこう、空っぽの状態で仕上げたかったので。
それをずーっとなんか頑張ろうと維持してたら、いつの間にか1週間経ってたみたいのはありましたね。はい」
林修「体調は大丈夫だったんですか?」
大森「でも、5㎏ぐらい痩せました、1週間で」
林修「で、その(映画)「ラーゲリ」で、中島健人くん?」
大森
「そうです そうです。舞台挨拶の時に、あの声をかけていただいて。
そこで連絡先交換して仲良くさして頂いてますね」
(スタジオで…)
公私ともに仲良くしているという中島健人がN.Y.で見た大森の意外な一面を語っていた。
田村淳「どういうところが、大森さんのすごいところだと感じますか?」
中島健人
「いや、ON OFFがしっかりしてますね。
だから、普通にそれこそこの間一緒に朝食食べてる時は、もう本当にステージのミセスの大森元貴ではないです。
めちゃくちゃ自然体だし。
なんかやっぱプライベートでは、結構弟っぽいんですよ、元貴って。
だからなんかこう、ミセスの中ではすごくやっぱ中心的だから。
そのギャップがすごいなって。
どっちが先に瞬きするかゲームとかしてますけど…」
ハライチ澤部「つまんな。なにそれ」(笑)
ミセスの楽曲の歌詞を林修が考察
1曲目 大森が16歳の時に作った楽曲「パブリック」…光と闇の対比
歌詞
『知らぬ間に誰かを傷つけて 人は誰かの為に光となる
この丸い地球に群がって 人はなにかの為に闇にもなる』
林修
「誰かの為に光となるっていうのは分かりやすいですよね。
でもそのやっぱり、人間ていいことだけではない。
だから、こうあえて泥をかぶってっていうこともあり。
人は何かの為に闇にもなるっていうことで、この光と闇との対比が実に素敵だなと。
ああ、こういう対比をきちんと書かれる方なんだなと、まず思いまして」
大森
「ありがとうございます。
「パブリック」っていう楽曲って、僕が16(歳)の時に作っていて。
高校1年生。ミセス組みたての時に作ってるよね」
林修「は~でもやっぱり16でもう「人はなにかの為に闇にもなる」って」
大森
「いや、16(歳)だからこそ、書けたのもあるとは思うんですけど。
どこかやっぱ死生観みたいなものとか。
まあ、諸行無常みたいな、形あるものはなくなっていくみたいなところにすごい寂しさを覚える子どもだった気がしていて。
なんか、それが強く出ているなっていう風に今見返すと思いますね」
若井
「メンバーである僕は、当時この歌詞がたぶん完全に理解できてなくて。
同い年。すごい高校生だったんですけど。
「人はなにかの為に闇にもなる」ってどういうことなんだろう?っていう風な考えに至るというか。
でも、今になったら分かるみたいなことがすごく多くて。
でもその当時から元貴はすべてをこう考えて曲にしているって考えると、すごいなって改めて思うんですよね」
藤澤
「当時から物事に対して、すごく俯瞰した考え方を持っていたので。
まあ僕、2人よりも3つ上なんですけれども。
結構話していて、元貴からこう教わることが多かったりとかするので」
大森
「いやでも、藤澤がちょっとね。普通の3つ上よりかはしっかりしてないっていうのもありますけどね」
藤澤「僕の問題か?」
大森
「ちょっと抜けてるっていう。引いた椅子は戻しなさいみたいな、そっから話をしたので」(笑)
林修「そっからだったんですね?」
大森「そっからでした、はい」
藤澤「勉強になります」(笑)
2曲目 「ライラック」…比喩と現実の綺麗な対比
林修「この光と闇の対比に近いものが「ライラック」」
歌詞
『影が痛い 価値なんか無い 僕だけが独りのような
夜が嫌い 君が嫌い 優しくなれない僕です
光が痛い 希望なんか嫌い…』
林修
「特に面白いなと思ったのが、「影が痛い 光が痛い」。
綺麗な対比が成立してるんですよね。
影が痛いってやっぱ…影って痛くないじゃないですか。
だから、これ比喩ですよね。
でも、光が痛いはこのパッとまぶしいのが当たって、うわ、痛っ!ってなりますよね。
だから、対比として完結したら、レトリックとしては、比喩(影が痛い)と現実(光が痛い)の対比になって。
おっ、こういうことって、表現であるんだってすっごい感心したんです」
大森「へぇ~!へぇ~とか言っちゃった」(笑)
難しい曲のタイトル…でも実は、活字が苦手
活字、本を読むことが苦手
大森元貴が曲作りを始めたのは12歳。小学6年の頃。
曲のタイトルには、「アウフヘーベン」や「アポロドロス」など聞き馴染みのない言葉がよく使われているが…
林修
「ホントにちょっと難しめの言葉がポンポンとこう出るっていうのは、まあ普段からやっぱり曲を作られてる…歌詞を書かれてるからですかね?」
大森
「僕…実は活字が苦手で。
本を読むということが、実はちっちゃい時からすごく苦手で。
ここ(本の先の部分)を隠しながらじゃないと、文字が入ってこないんですよ。
うわーって一遍に入ってきちゃうんで」
若井「情報がね」
大森
「そう。だからすごく苦手なので。
歌詞を書くっていう意味でも、実は…うん…最初の方とかはすごく戸惑いながら書いてましたね。はい」
哲学書だけは読める
林修
「いや、もうだって、タイトルに「アウフヘーベン」って言葉を選ぶ方だから。
もう絶対この方は、たくさん本を読まれてて。語彙力たくさんあってっていう風に思ってましたよ」
※アウフヘーベン…対立し合2つの要素を掛け合わせ、高次元に昇華させることを指す哲学用語
大森
「でも、哲学書だけ読めるんですよ。不思議なんですけど。
なんか僕はちっちゃい時に、こう子どもが読む哲学みたいなのがすごく好きで。
そういうのだけは読めたんですよね。
だから、ちょっと関係があるのかも?ぐらいですね」
林修「じゃあもう、小さい頃から「アウフヘーベン」という言葉をご存知で」
大森
「あ、はい。知ってました。「アウフヘーベン」こそ、だって、高校2年生ぐらいに書いた曲なので」
林修「僕もう「アウフヘーベン」って普段から使っちゃうんで」
大森「そんな人いるんだ(笑)」
(スタジオで)
林修「え?使うようね?」
ブラマヨ小杉「ここで初めて知りましたよ、俺たち」
共通しているのは…「きれいごとを歌いたくない!」ということ
デビュー10周年の今年は、ベストアルバムをリリースし、2日で10万にを動員するミセス史上最大規模のライブを開催。
そんなミセスの楽曲作りには、彼らなりの美学があった。
音楽は生活に必須なものではなく、「あった方がいいよね」ぐらいなものだから…
大森
「やっぱずっときれいごとを歌いたくないっていうのは、僕の中で共通している言葉で。
まあ、衣食住じゃないので、音楽って。
あってもなくても。まあ、「あった方がいいよね」ぐらいのものだと思うので。
なんかやっぱ僕としてはその、聴いてる時よりもじゃあ5年後とか、10年後とかで。
あの曲がこういう意味なんだとか。なんかそういう詞的な部分だったりとか。
なにかこう1つの捉え方で終わるのではなくて。
人生観で、様々な楽曲の聴き方があるっていうものに、僕はすごくそれを理想とするので。
だからこそ、なにか言い切ってないっていうところが僕の美学なのかもしれないですね」
綺麗ごとは歌わない。
人生の光と影をあわせ持つ楽曲だからこそ、Mrs.GREEN APPLEは人々の心を打ち続けるのかもしれない。